またなと言って欲しかった。

「じゃあな。」


夕方の帰り際、ゾロが片手を上げて俺にそう言う。
俺も両手をブンブン振って「また明日な」って言い返す。

くるっと俺に背を向けて歩き出す大きな背中にずっと手を振り続ける。


"じゃあな。"
その一言で俺の中の一日が終るんだ。

今までずっと一緒に居たのに離れるとまたすぐ抱きついて一緒に居たくなっちまう。

今まだ目の前にあるゾロの背中に抱きついてしまいたくなっちまうんだ。

くそぅ‥なんで家が反対方向なんだよ…
同じ方向ならまだもう少し、一緒に入れたのにさ。

なんて俺、考え方女々しいかな…?

でも、そんな風になっちまうぐらい、俺はゾロが大好きなんだ。


本当は、本当はな‥ゾロ。

じゃあななんて…言って欲しくねぇんだぞ。
だって、さようならって意味じゃんか。

その言葉言われたらそれっきりじゃんか…

本当は凄く、切なくて、寂しいんだぞ…?

ゾロはそう思わないのかな…?




俺ばっかりなのかな…




夕陽色に染まるゾロの背中が見えなくなるまで俺は家には帰らない。
途中で振り向いてくれないかな、なんて毎日期待してるけど、一度だってそんな事はねぇ。
もし振り向いてくれたら駆け寄って思いっきり抱きつくのに。

ゾロは一度だって振り向かない。

そのまま俺の前から小さくなって、夕陽に溶けて消えるだけ。


『じゃあな。』

その一言が俺を辛くさせる。




END
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